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企業家に向けた17億円の調達支援実績。 佐藤公信氏

学生は一度、クラウドファンディングをやってみればいい
開志専門職大学で講師を務める株式会社パブリックトラスト 代表取締役、佐藤公信さんに、高校から大学時代、そして社会人生活のお話を伺いました。 また、開志専門職大学で学生たちにどのようなことを伝えたいのか、高校生にやっておくべきこともお聞きしました。
空手に熱中していた高校時代

開志専門職大学

どのような高校時代だったのですか?

佐藤公信

立教池袋高等学校で空手に熱中していました。なんのために学校に行っているのかというと空手のため。授業中は寝ていました(笑)。

開志専門職大学

空手はいつから始めたのですか?

佐藤公信

高校三年の部活だけです。なぜ、始めることになったのかというと、父親が甲子園に4回くらい出ている高校球児で、

佐藤公信

「高校時代はスポーツだ。スポーツをやらないなら高校には行かせない」と言うので、『今更野球は無理だから、武道なら認めてくれるだろう』と思ったからなんです。

開志専門職大学

それで空手なんですね。

佐藤公信

入学した高校は空手が強かったんです。『この部に入れば全国大会に出られるかもしれない』と思いました。

開志専門職大学

県大会で優勝されたのだとか。

佐藤公信

新人戦の2年生の秋、インターハイの予備みたいな関東大会でメダルをもらいました。部員は30人くらいいましたが、副主将を務めたこともありました。

開志専門職大学

なぜ、立教池袋高校を選んだのですか?

佐藤公信

立教池袋高校は小学校から大学までの一貫校です。私は小学校のときに受験して中学校に入学しました。なので、自分の意思ではなく、親が決めたことでした。

開志専門職大学

すると、大学もそのまま立教大学へ?

佐藤公信

そうです。立教の推薦を蹴ってまで他の大学に行こう、とは思いませんでしたね。

開志専門職大学

大学時代はどうでしたか?

佐藤公信

武道は先輩後輩の上下関係が厳しい世界です。それに礼儀にすごくうるさい。そんな、武道という窮屈な世界から開放して、自由に表現したくなり、学生演劇を始めることになりました。

開志専門職大学

180度の転換ですね。

佐藤公信

はっちゃけたかったんです。厳しさからの反動があったのかもしれません。それに、舞台の上で汗をかく方がカッコいいと思ったんです。

佐藤公信

学生劇団に入り、大学時代の4年間、役者をやったり、演出もやりました。

開志専門職大学

勉強の方はどうでした?

佐藤公信

大学で勉強しようという気はほとんどなかったですね。エスカレートで大学まで進んだので、勉強して頭に知識を詰め込む必要がなかったんです。

佐藤公信

でも、入ったディベートのゼミは熱中していました。ここで知的欲求が生まれるということと、その知識欲求が満たされることの楽しさを知りました。

開志専門職大学

どういうところに惹かれたのですか?

佐藤公信

ディベートなので、論理構築をして、その論理で相手を論破する。共感を得るための論理構築としゃべり方が学べたことです。

佐藤公信

学生演劇で発声練習や表現力を磨いていたので、それもプラスになりました。

開志専門職大学

それも表現ですね。

佐藤公信

そうです。決められたことだけをやっていた高校時代から、大学生になって自分が興味を持ったものに対して欲求を満たすことにシフトしたと言えるかもしれません。

佐藤公信

学生演劇とゼミで、表現したことで人が感動してくれる、共感してくれる。そのことで自分も嬉しくなるということを体感しました。

一生かけて勝負しないかと誘われて

開志専門職大学

就活はどうでしたか?

佐藤公信

私は、俳優になりたかったので、就活はしていなかったんですよ。でも、俳優で飯は食えないと思っていました。先輩に俳優を目指している人がいましたが、上手くいった人はいませんでした。

佐藤公信

それで、俳優ではないけれど、何かを表現する仕事はないかと考えたとき、クリエイターがカッコいいなと思ったんです。コマーシャルを制作する会社に就職してディレクターみたいなことはできないだろうかと考えました。

佐藤公信

でも、同期は就活をはじめているのに私は何もしていませんでした。というのは、かつては「就職協定」というものがあり、大企業と大学が解禁日まで就活を始めないよう協定を交わしていたんです。

佐藤公信

私はその決められた解禁日まで律儀に待っていました。同期は解禁日を待たずに就活しているのに。

佐藤公信

するとゼミの先生が心配して、「面白いやつがいるから、だまされたと思って一度会いに行け」と紹介されたのが、クレディセゾンの営業企画部長でした。クレディセゾンというよりセゾンと言った方が分かりやすいかもしれませんね。

佐藤公信

その部長が「佐藤君は何がやりたいんだ?」と聞くので「CMのディレクターです」と答えると、「たった30秒で消えてなくなるものに勝負するのか、一緒に一生かけて勝負しないか」と言われたんです。

開志専門職大学

カッコ良いですね。

佐藤公信

カッコ良かったんです。衝撃的でした。しかも、その部長は「俺は将来、この会社の社長になるから」と、周りに他の部長がいるなかで言うんです。

佐藤公信

私はサラリーマンぽくない姿を見て「この人の許で、一生かけて人生をクリエイティブして行こう」と思いました。クリエイターになるという目的とは違いますが、人生をクリエイティブすることもクリエイターだと自分を言い訳をして。

開志専門職大学

一応、自分への言い訳が必要だったわけですね。

佐藤公信

それで、2次募集で受けて入社しました。ちなみに、その部長は今の代表取締役会長CEO、林野宏さんです。

開志専門職大学

それはすごいですね。

佐藤公信

入社してから知ったのですが、クレディセゾンは数年前に破綻していて、建て直し中でした。なので、大学の卒業生を採用するのも数年ぶり、という状態だったんです。

佐藤公信

でも、それが結果として良かったんです。先輩も同期もほとんどいないから競争は楽。出世も早かったです。ラッキーでした。

高飛車でイヤな奴になっていることに気づく

開志専門職大学

クレディセゾンではどのような仕事をされていたのですか?

佐藤公信

営業企画というセクションなのですが、経営層の会議の事務局です。会議でしゃべる経営層の構想をまとめて議事録を作成する担当でした。

佐藤公信

クレディセゾンという会社は、職制によって情報のギャップを作らない、という方針がありました。例えば、部長は知っているのに課長が知らないことがあると、部長に情報の優位性が起こり、そのため課長に一方的に命令する、ということになり得ます。

佐藤公信

それをなくすために、経営層の構想は議事録にして末端の平社員までオープンにしていたんです。

佐藤公信

でも、会議はカオスです。しゃべったことをそのまま文章にしても意味が違うことがあります。言いたいことの趣旨を考えて言葉を変換してまとめる必要がありました。

佐藤公信

また、年に2回ある会社の方針を決める社長と常務の幹部会議に、私も参加して話を聞いて、1週間くらいでまとめていました。クレディセゾンには13年間在籍していましたが、ずっとそれをやっていました。

開志専門職大学

重要なポジションですね。

佐藤公信

でも、私は「こんなことをやっていて、なんになるんだ」と反発していました。私はずっと営業を希望していました。でも、異動させてくれませんでした。「ただの便利屋にされている」と思いました。

佐藤公信

ただ、出世は早かったです。同期より早く、最年少の28歳で課長になりました。それでも、「このままでは、なんのスキルにもならない」と思っていました。今ではとても役立っていますけどね(笑)。

開志専門職大学

当時はスキルにならないと思っていたのですね。

佐藤公信

社長と常務の次に私が情報を持っていました。すると、他の部署の部長などがその情報を聞きに来るんです。社内接待をされたこともあります。

開志専門職大学

30歳そこそこのぺいぺいが、50歳を過ぎた人から接待されたら、そりゃ、バカになりますよ(笑)。自分でも知らないうちに高飛車ですごくイヤな奴になっていました。そのことにある日、ふと気づいたんです。

佐藤公信

周りがそうさせていたんですね。

佐藤公信

それで、「このままではいけない」と思い、独立することにしました。そのときはなぜか、転職とは思わなかったんです。

クラウドファンディングでは情熱が大事

開志専門職大学

それで何をはじめたのですか?

佐藤公信

悶々としているときに、ソニー生命の人から連絡があって「生命保険を売る仕事をしませんか」と言われたんです。社員ではなく保険のセールスマンです。

佐藤公信

独立採算制で固定給はなく、自分の腕で稼がなくてはいけませんでしたが、3年やりました。それで今の会社の資本金として1000万円を貯めました。

開志専門職大学

それはすごいですね。

佐藤公信

やっているときは一生、保険のセールスマンをやるつもりでいたので、結果的に1000万円貯まったというだけなんですけどね。成績も優秀で、3年いて毎年、優秀賞としてハワイ旅行をプレゼントしてもらっていました。

開志専門職大学

どうしてそんなに上手く行ったのですか?

佐藤公信

営業の経験はなかったのですが、やってみると意外と得意で、楽しかったんです。

佐藤公信

私は、中小企業の社長などに、その人が知らないような情報を教えてあげていました。「へ〜」とか「ありがとう」という言葉を聞くのが嬉しくて。

開志専門職大学

保険を売るのではなく、情報を提供していたのですね。

佐藤公信

そのとき、中小企業の社長に共通する悩みは「良い人材の確保」「売上の向上」と「資金調達」だと知ったんです。

開志専門職大学

よくわかります。

佐藤公信

前職が人事関係や金融関係のセールスマンがそんな中小企業の社長の悩みを解決する方法を武器に売り込み、稼いでいました。

佐藤公信

私も何か武器になるものはないかと考えたとき、「資金調達」がいいんじゃないかと思ったんです。それでベンチャーキャピタリスト養成スクールに通って勉強しました。

開志専門職大学

他のセールスマンがやっていないことを武器にしたわけですね。

佐藤公信

そうです。それを発展させるために、パブリックトラストを設立しました。

開志専門職大学

パブリックトラストの業務内容を教えてください。

佐藤公信

パブリックトラストでは、クラウドファンディングのコンサルタントと、起業家の夢を企画にする専門コンサルを行っています。

佐藤公信

具体的に言うと、クラウドファンディングでは、支援者のハートに訴える熱い情熱が必要です。でも、多くの人はその熱い情熱を上手に伝える方法を知りません。

佐藤公信

パブリックトラストでは分かりやすく表現する方法を教えています。

開志専門職大学

今後、クラウドファンディングはどうなって行くでしょうか?

佐藤公信

みんなが知っているクラウドファンディングは、「こういう面白い商品があるから、先に買いませんか」とか、「こんな活動をやるので支援してください」というものだと思います。

佐藤公信

支援者は「面白そう」というハートの部分で投資をしていました。しかし、本当の投資家はクラウドファンディングで投資はしていませんでした。

佐藤公信

ところが株式型クラウドファンディングという新しいビジネスが生まれました。これは企業の事業に対して投資をするものです。しかも、投資をする理由は成長性より企業のエモーショナルです。

佐藤公信

従来、投資の世界では成長性が大事で、エモーショナルは無視されていました。でも、消費の世界では昔からエモーショナルで動いていたんです。

佐藤公信

同じ値段だったら美味しい方、楽しい方を選びます。また、高くても気分が良い方を選びます。これがエモーショナルな消費です。

佐藤公信

投資の世界ではナンセンスだったエモーショナルが、クラウドファンディングでは重要になっています。

開志専門職大学

クラウドファンディングがビジネスに活かせるようになったわけですね。

佐藤公信

そうです。今までなら資金調達をしようとすると金融機関にお願いするしかありませんでした。しかし、これからはクラウドファンディングという方法があります。手間も時間もかかる金融機関より、クラウドファンディングの方が楽です。

佐藤公信

これから、クラウドファンディングはもっと生まれて、もっと活用されるようになります。

人は共感以外では動かない

開志専門職大学

開志専門職大学ではどんなことを教えたいですか?

佐藤公信

大学の4年間で自分のやりたいことを見つけて、大学時代から起業することです。

佐藤公信

「資金がない」というのなら、クラウドファンディングがあります。そんな資金を集めるスキルを教えたいです。就職だけが人生ではありません。

佐藤公信

クラウドファンディングでは自分の想いを伝えることが大切です。また、「こうすれば、こんな課題が解決する」といったロジックも必要です。それで共感してもらうことが重要なんです。

佐藤公信

人は共感以外には動きません。共感以外で動くのは「愛」だけです。

開志専門職大学

上手い(笑)。

佐藤公信

学生は一度、クラウドファンディングをやってみればいいと思います。

佐藤公信

よく、勘違いしているのは、クラウドファンディングの運営会社が資金を集めてくれると思っていることです。運営会社はプラットフォームを提供しているだけ。

佐藤公信

資金を集めるのは本人の努力。その努力次第で資金が集まります。その努力の仕方を知らない人が多いんです。知らないなら学ぶしかありません。

開志専門職大学

学ぶことが大切だと。

佐藤公信

勉強と聞くと押し付けられていると思うものです。授業を座って聞いているだけが勉強ではありません。ウイキペディアで調べることも勉強です。アニソンの歌手を調べることも勉強です。

佐藤公信

自分の得意分野を見つけて、情報収集して、その情報を頭のなかで組み合わせる。その瞬間、その情報は自分だけのものになります。

開志専門職大学

最後の質問ですが、高校生の間にやっていた方が良いことはなんでしょうか?

佐藤公信

好奇心を持って「面白そう」と思ったことは調べてみたり、動いてみて欲しいですね。そのとき、楽しかったことをすれば良いだけだと思います。

佐藤公信

特に勉強しなくても、いずれ、「勉強しておけば良かった」と思うときがきます。そう思ったときに勉強すればいいんです。いくつになっても勉強はできます。勉強したいと思ってする勉強が一番、勉強になります。

開志専門職大学

ありがとうございました。

特別講師 佐藤公信(さとう・きみのぶ)氏
株式会社パブリックトラスト
代表取締役

1960年生まれ。千葉県出身。株式会社パブリックトラスト代表取締役。クラウドファンディング・コンサルタント、および、起業家の夢を企画にする専門コンサルタント。
立教大学社会学部卒業後、株式会社クレディセゾンで企画業務に携わる。2000年、株式会社パブリックトラストを設立。

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