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英語・IT・工夫する努力の3つの柱で21世紀を生き抜く。 大西正之氏

2018年、調査機関が発表した「日本の働きがいのある会社ランキング」で堂々1位を獲得したのがシスコシステムズです。データ通信の機器製造と販売、サービス提供を手がける同社は、インターネット世界に生きる私たちにとっては不可欠な存在です。大西正之さんは、日本のシスコシステムズに入社し、7年後に希望が叶って米国本社で働き始めました。「日本の働きがいのある会社1位」の米国本社は、さらに先を行く働き方改革を実践。大西さんは、カリフォルニアのビーチシティーにある自宅を拠点に世界中を出張で飛び回るという、自由で充実したアメリカ生活を送っています。大西さんが今の生活を手に入れるまでにどのような軌跡を辿ってきたのか、21世紀を生き抜くために大切なことは何かについて、Cisco Systemsのオフィスで伺いました。
世界中に散らばっているスタッフをカリフォルニアで統括 ITを駆使して会議もウェブで。「働き方改革」の最先端を実践。

開志専門職大学

大西さんのお仕事について教えてください。

大西正之

私の仕事はITの技術者です。これまで20年以上、世界30カ国以上で技術者として活動してきました。今年(2019年)に入ってからも5月末までで、拠点である米国国内の各地からスペイン、イギリス、韓国、台湾、メキシコ、ブラジル、アルゼンチンを訪問し、技術支援を行ってきました。

大西正之

日々の仕事は、社内も社外も常に日本人は私一人という環境で、会話は100%英語です。

開志専門職大学

世界各国に出張が多い理由は?

大西正之

国際企業のグローバル化をITの角度から技術支援するチームを率いているためです。

大西正之

例えば、私自身はカリフォルニアに住んでいますが、上司はオーストラリアにいます。私のチームスタッフは全世界に散らばっており、同じアメリカ国内でもテキサス州のダラスやニューヨークなどにいます。

大西正之

ITを駆使して、パソコンの画面に相手の顔を映し出してウェブ会議をするので、決まったオフィスに出勤する必要がありません。

大西正之

私も基本的に自宅勤務で、オフィスと同様の設備がそろっている自宅で仕事をしています。

開志専門職大学

ということは、私たちがお邪魔しているこのオフィスには普段は出勤していない、ということですね?

大西正之

そうです。普段顔を合わせないので、知り合いがほとんどいませんね(笑)。

開志専門職大学

具体的にITの技術者としてどのようなことをされてきたのですか?

大西正之

某自動車会社が全世界に張り巡らせている情報通信システムを設計したり、また、日本の大手通信事業者が提供しているインターネット接続網を設計したりもしました。

大西正之

ただ、私たちの仕事には守秘義務(顧客の情報を秘密にする義務)があって、特定の企業名を明かすことはできません。

開志専門職大学

それでは、今、大西さんが所属されているCisco Systems, Inc(以下Cisco)という会社について教えてください。

大西正之

Ciscoはインターネットを含めた通信技術を提供するグローバル企業です。

大西正之

みなさんがInstagramやGoogleをパソコンやスマホで利用する際にインターネットにつなげていますね。それを高速かつ安全につなぐための通信機器の開発、販売を全世界で行っています。

大西正之

本社はカリフォルニア州シリコンバレーにあり、年商(年間の売上)は約5兆3000億円。社員数は7万5000人です。

開志専門職大学

数字が大きすぎて想像できないです。

大西正之

通信機器のルーターやサーバの市場シェアは世界1位なんですよ。

ソフトウエア開発者から通信技術者に転身 日本のシスコシステムズからアメリカ本社のCiscoへ。

開志専門職大学

私たちの目には見えないけれど、インターネットを使う時にはCiscoさんにお世話になっているということですね。Ciscoで働いて何年になるのですか?

大西正之

2000年に日本のシスコシステムズに入社し、2007年に本社があるアメリカに移ってきました。ですから日米合わせて20年目になりますね。

開志専門職大学

学校を出てすぐに入社した会社ではないのですか?

大西正之

私は20代で数度の転職を経験しています。学校を出て最初に入ったのは大阪商工会議所でした。そこではアプリケーション開発の仕事をしました。

大西正之

その後、製薬会社に入り、基幹システム開発を担当した後、次にインターネットの会社の大阪支店立ち上げに携わりました。しかし、その会社はライバル企業にコテンパンにやられてしまったんです。

大西正之

そのライバル企業であるシスコシステムズに、私は引き抜かれる形で転職したのです。

開志専門職大学

途中からコンピュータシステムの開発のお仕事からインターネットのお仕事に変わったということですね。

大西正之

そうです。90年代初めのインターネット時代の幕開けとともに、「これからはデータ通信技術が重要になる」と感じました。ソフトウエア開発者から通信技術者への転身は容易ではありませんでした。

開志専門職大学

シスコシステムズ入社7年でアメリカ本社に異動されたわけですが、ご自分で希望されたということですか?

大西正之

どうしても海外に出たいと思っていたので、事有るごとにアピールしていました。日本にいたときからグローバル企業を担当していて、海外出張も海外勤務の人と話すことも多かったので「チャンスがあったら、声をかけてください」と常に言い回っていたのです。

開志専門職大学

そのことが実を結んだのですね。

大西正之

ある時、直接連絡があって、アメリカ本社にポジション(席)があるから応募するように勧められたというわけです。それで一度日本のシスコシステムズを退職し、米国本社のCiscoに入り直しました。

開志専門職大学

迷いはなかったのでしょうか?

大西正之

年齢は30代後半でしたし、妻も娘もいました。でもそれを「海外には行けない」という理由にはしたくありませんでした。

大西正之

一番背中を押したのは、「一度しかない人生で夢を叶えたい」という自分の思いでしたが、家族を含めた周りの人の賛同や応援も心強かったです。

自分で貯めたお金でカリフォルニアに留学 衝撃はアメリカ人のスキンシップ、そしてスケールの大きさ。

開志専門職大学

もともと、海外には出たいと思っていたのはなぜですか? 海外を最初に意識したのはいつでしたか?

大西正之

中学の頃から洋画や洋楽にどっぷりと浸かり、海外に憧れていました。でも、当時は田んぼに囲まれていた大阪の田舎に住んでいたので、自分が海外に行くことなんて想像もできませんでした。

大西正之

ところが高校時代の友達がいきなりアメリカの大学に留学することになったのです。そのときから急に海外が近く感じ始めました。

開志専門職大学

ご自分も行けるかも、と思われたということですね。それはいつ実現したのですか?

大西正之

20歳の時です。自分でお金を貯めて、カリフォルニアのベンチュラ郡に語学留学を目的に数カ月滞在しました。

開志専門職大学

カルチャーショックは感じました?

大西正之

ホストファーザーが警察官の家庭にホームステイしたのですが、一番の衝撃はスキンシップが多いことでした(笑)。

大西正之

それからスケールの大きさ。なんでも大きくてびっくりしました。ステーキのサイズもそうだし、道路の道幅とかもですね。

大西正之

あとはイベントやお祭りに宗教色が強いことと、愛国心を育むように誘導している点も印象に残りました。でも、そのときは「いいもの見せてもらったな」という程度で、まさか、自分が仕事したり生活したりするためにまたアメリカに戻ってこられるとは思っていませんでした。

大西正之

戻ってこられるとは思っていなかったけれど、ホストファミリーや学校の先生たちとのリレーションシップ(関係)は30年経つ今でもずっと途切れることなく保っています。

開志専門職大学

留学の後は一度日本に戻り、社会人になって、改めてCiscoのアメリカ本社に転籍してくることができたわけですね。実際にアメリカで働き始めて戸惑ったことはありませんでしたか?

大西正之

やはり言葉と文化の壁です。克服するためには失敗の経験を通じて対処法を編み出すしかありませんでした。

開志専門職大学

どのような失敗をされたのですか?

大西正之

失敗ではないのですが、日本人同士で日本語で話すときは、きれいに順序立てて話さなくてもお互いのニュアンスで伝わることが、英語では伝わらないことがよくありました。

大西正之

日本人であるという別の文化圏から来ていて、さらに第二言語として英語で話しているので当然かもしれません。

大西正之

ただそれを日本から出張ベースで来ていたときは相手が合わせてくれていたんです。ゲスト扱いされていたんでしょうね。でも、こちらに来て現地スタッフとして働いていると、相手に「何が言いたいか分からない」と言われます。

大西正之

それで、英語で言葉を発する前に、頭の中で整理してから端的に話すようになりました。その手法は逆に日本語で話すときにも同様に行えるようになりました。

言葉も文化も異なる多様性の国、アメリカ 学んだのは違いを受け入れ、楽しむこと。

大西正之

それに多様性を理解することも重要です。日本人は皆会社に行くときは黒っぽいスーツで、お笑いにも毎年の流行があって、次の年に古いお笑いの話をしませんよね。

開志専門職大学

日本人は皆、同じであることに安心する傾向があるかもしれないですね。

大西正之

しかし、アメリカは皆が同じことはしないし、実際同じではないし、共通性を探そうと思っても見付けるのが難しいです。

大西正之

例えば私のチームは、先ほどもお話ししたように上司はオーストラリアに住む南アフリカ人、チームスタッフはイギリス人、インド人、ベネズエラ人と出身国は多岐にわたります。

大西正之

言葉も文化も異なる中で、大変なことも多いですが、楽しみも多いです。今では私自身、そのような多様性を受け入れることができるようになりました。

開志専門職大学

英語についてはどうですか? アメリカに来たときから、以前の留学や海外出張のご経験から、ある程度英語はできたのでしょうか?

大西正之

ビジネス英会話はできていましたので、今とさほど変わりません。

開志専門職大学

英語を上達させるために努力されたことはありますか?

大西正之

自己対話を全て英語で行いました。自分で言いたいことがあるけれど、それを英語で言えないときは、そのたびにどう言えばいいのかを調べました。そのことは今でも続けています。

開志専門職大学

英語も仕事の進め方も努力されてアメリカ生活も12年経つわけですが、アメリカで働く醍醐味とは?

大西正之

ビジネス規模の大きさと物事が進むスピードの速さですね。それから、仕事と私生活のバランスの良さも気に入っています。

開志専門職大学

仕事と私生活のバランスが良いというのは、やはり在宅勤務が関係しているのでしょうか?

大西正之

そうですね。自宅は海沿いのリゾート地にあり、その自宅を拠点に、必要と計画に基づいて世界各国の拠点を年間80日程度出張するという仕事の進め方をしています。

大西正之

プロセスよりも計画と結果が重要視されますので、計画に基づいてビジネスを進めながら、趣味や家族、友達とのプライベートの時間も自由に作れます。さらに自分の技術を生かしたボランティア活動も積極的に行っています。

開志専門職大学

自由ですね。

大西正之

確かに、アメリカの素晴らしさは、自由度の高さだと思います。

開志専門職大学

話を子ども時代に戻します。将来何になりたいと思っていましたか?

大西正之

子どもの頃はロクロを回す陶芸家に憧れました。その後、ハリウッド映画やMTVの影響を受けて、「外国人相手に英語で会議するとかかっこいいなあ」と夢見ていました。

開志専門職大学

その夢が今は現実になっていますね。高校時代は?

大西正之

バレーボール部と写真部に所属し、のんびり過ごしました。勉強を頑張った記憶は全くありません。結果、ひどい成績でした。

若い人にはできるだけ早く世界を知ってほしい 21世紀を生き残る柱は「英語」「IT」「行動力」だ。

開志専門職大学

高校を卒業してからは?

大西正之

もう今はないのですが、アクセスキャリアカレッジという学校でコンピュータサイエンスを専攻しました。しかし、その頃から親からの経済的援助を自ら断ったので、働いてばかりの日々でした。

開志専門職大学

経済的に独立したのですか?

大西正之

はい、親は会社を経営していましたし、経済的に苦しかったわけではありません。しかし、よく「好き勝手なことするのは自立してからにしろ」と言われていたせいで、だったら、学費も生活費も自分で出そうと、新聞奨学生として配達所に住み込んでずっと働いたのです。

大西正之

大阪市立大学医学部附属病院のIT部門でも働きました。とにかく生きることに必死でしたね。

開志専門職大学

高校時代とはガラリと変わったわけですね。そんな働きづめだった大西さんから、これから大学に進む日本の高校生に「大学時代にこういうことをしておいたほうがいい」とアドバイスするとしたら何と言いますか?

大西正之

まず、できるだけ早いうちに世界を知ること、です。

大西正之

次に全てのことに対して「なぜか?」と考える習慣をつけること。そして最後は、60歳になった時に後悔しない生き方とは何かについて考えを巡らせられるということです。私自身が若いときにそれができなかったので、後悔していることでもあります。

開志専門職大学

それでは開志専門職大学の特別講師として、大西さんが話されたいと思うことは何ですか?

大西正之

ITの流れ、世界経済の動き、セルフブランディングの進め方、さらにストレスをためない自分に合った生き方を見つけるコツもお伝えしたいです。そうすることによって、皆さんや日本の国の手助けができればと思っています。

開志専門職大学

最後に高校生の皆さんにメッセージをお願いします。

大西正之

私が考える21世紀を生き残る柱は3つあります。「英語」「IT」そして「行動力」です。英語が話せれば間違いなく世界が広がります。

大西正之

ITを有効活用すれば、物事の効率的な進め方が可能になります。それら2つを身に付けて行動していけば、素晴らしい未来が見えてくるはずです。

大西正之

あと、日本人の好きな言葉に「努力」がありますね。私が思うのはやみくもに頑張らない方がいいかもしれない、ということです。それよりも「工夫する努力」を心がけていただきたいと思います。

開志専門職大学

ありがとうございました。ではぜひ、開志専門職大学の学生たちに向けた「21世紀を生き残るため」の特別講義をよろしくお願いします!

インタビュー:福田恵子
撮影・動画:安部陽二

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