特別講師一覧

世界のGoogle。そのネットワーク構築が自分の任務。 大石岳志氏

グーグルと言えば1990年代の半ば、インターネットの検索エンジンからスタートして、現在ではオンライン広告、クラウドコンピューティング、ソフトウェア、ハードウェア、さらには人工知能や自動運転車の分野にも進出している、アメリカの代表的なIT企業です。そのグーグル本社に勤務している大石岳志さんは「高校生の頃は目標がなく、将来のことを何も考えていなかった」と振り返ります。大石さんがどのようにして目標を定め、そしてグーグルで活躍するようになったのか、本社があるカリフォルニア州シリコンバレーでお話を伺いました。
アメリカの大学生時代、クラスメイトの 「これからはインターネットの時代だ」の言葉で進路転換

開志専門職大学

グーグルはインターネットの検索エンジンの会社として有名ですが、

開志専門職大学

他にどのようなことをやっているかについて教えてください。

大石岳志

グーグルのサービスで代表的なものはグーグルマップやユーチューブ、それからGメールなどですね。

開志専門職大学

その会社で大石さんはどのようなお仕事をされているのでしょうか?

大石岳志

グーグルのサービスを利用する際には、世界中の利用者がデータセンターにアクセスすることが必要です。

大石岳志

そのデータセンターは実は台湾だったり、アメリカだとオクラホマだったり、利用者からするとかなり遠いところにあります。

大石岳志

しかし、あたかもそのデータが利用者のすぐ近くから送られているかのように、速く、しかも料金的にも安くデータを送信するネットワークが必要なのです。

大石岳志

そこで私の仕事は、遠いデータセンターから送られているデータが、まるで利用者の端末の中にあるように感じてもらうために、効率的なネットワークを構築することなんです。

開志専門職大学

何人くらいで作業に当たるのですか?

大石岳志

実際のテストに携わるのは4、5人です。自動化するためのプログラムを書く人を入れると8人くらいですね。

大石岳志

僕はテクニカルプログラムマネージャー(プログラムを管理する技術職)になって、5年になります。

開志専門職大学

もともとIT系に強かったのですか?

大石岳志

どうしてこの仕事を目指したかを話すとがっかりされるかもしれないですが(笑)。

大石岳志

アメリカのフロリダの大学に通っていた時に、マーケティング(商品を売るための調査や宣伝)を専攻していたんですね。

大石岳志

でも、母国語でない英語でマーケティングをやってもハンディがあるし、卒業後に、その専攻を生かしてアメリカで営業の仕事に就いたとしてもうまくいかないかもしれないと不安になってきたわけです。

大石岳志

そんな時に、同じクラスのタイ人の友達に「これからはインターネットがどんどん伸びる時代だから」と勧められて、勉強してみることにしました。

大石岳志

1990年代はそういう時代でした。それでコンピュータ系の専門学校に通ってみたり、ウェブサイトを自分で作ってみたりと自力で学び始めて、

大石岳志

マイクロソフトのサーバー(コンピュータからの指示を受けて処理を行うソフトウェア)に関する資格も大学時代に取得しました。

開志専門職大学

大学卒業後はどちらへ?

大石岳志

当時飛ぶ鳥を落とす勢いのシスコシステムズ(カリフォルニア州サンノゼに本社を置くコンピュータネットワーク機器開発会社)に受かったんです。

大石岳志

今でもありますけど、サンフランシスコのキャリアフォーラムという留学生向けの就職フェアで、シスコシステムズの面接を受けました。

開志専門職大学

合格の決め手は何でしたか?

大石岳志

マーケティングの専攻と、マイクロソフトのサーバー管理資格を持っているという珍しいコンビネーションが鍵になったと思います。

大石岳志

それにIP(インターネット上でのデータ通信の方法を定めた規約)をIBMにどうやってつなぐのかという話題で面接官と盛り上がったんです。

大石岳志

僕がその話題について触れたら、面接官がそれについて非常に熱く語り出したんですよね。

大石岳志

後で知ったことですが、たまたま、その方はそのテクノロジーにかけては日本でトップの人でした。

就職フェアの面接でシスコシステムズに入社し東京へ 資格取得を条件に、希望のアメリカ勤務が実現する

開志専門職大学

そして、シスコシステムズに入社したのですね。

大石岳志

はい、アソシエート・システムエンジニア(情報システムの企画設計の仕事)として東京勤務になりました。

大石岳志

でも絶対、アメリカに戻ってこようと思いながら日本で働きました。

開志専門職大学

願いは叶いましたか?

大石岳志

3年半くらい東京で勤務しながら、シスコ・ジャパンからアメリカのシスコに異動の機会を探りました。

大石岳志

しかし、そういう機会に恵まれなかったので、「辞めます!」と宣言して、何の仕事のあてもなくアメリカに戻ってくるつもりでした。

大石岳志

ところが、上司から僕のデスクに電話がかかって来たんですね。「怒られるかも」と怖くなって電話に出なかったら、またすぐかかって来ました。

大石岳志

それで電話に出たら、「ちょっと話をしないか」と言われまして。そして「シスコが嫌で辞めるんじゃないんだな」と確認されました。

大石岳志

「そうです」と答えると、「サポート職(技術的な問い合わせを受け付けて解決する仕事)としてアメリカに送れるけれど、そのための資格を取得しなければならない」と条件を出されました。

大石岳志

1年以内にその資格を取得すればアメリカのシスコに異動させてくれると言うんです。

開志専門職大学

それで挑戦されたんですね。

大石岳志

はい、CCIEという資格を頑張って取得しました。実際は1年半かかってしまいましたが(笑)。

大石岳志

アメリカに戻って来たのは2004年です。ノースキャロライナにあるオフィスで、冷蔵庫のように大きなルーターをサポートする仕事を担当しました。

大石岳志

でも僕は2011年でシスコを去ることにしました。

開志専門職大学

何があったんですか?

大石岳志

アメリカって技術者が大切にされる国柄ですが、いざ、時代が変わってそのテクノロジーが不要になると技術者の活躍の場も奪われてしまうのです。

大石岳志

当時、まだ若かったので、このままだと自分の今の仕事は無くなってしまうんじゃないか、自分が引退する60歳まで生き残れないんじゃないか、

大石岳志

という恐怖心に襲われるようになり、急いで次のキャリアを探すようになったんです。

求人応募したグーグルから連絡 「脳みそが死ぬ」ほど大変だった入社試験

開志専門職大学

それでグーグルへ?

大石岳志

その前に、2009年と2010年くらいからシスコの社内でも新しい仕事を探し始めました。

大石岳志

セールスの仕事はどうだろうと挑戦しようとしましたけど、面接でボロボロだったり。自分の認識の甘さを実感しましたね。

大石岳志

新しい仕事を探していた時に、以前、求人に応募していたグーグルから連絡が入って、最初は電話による面接でした。

大石岳志

それから3次面接まであって。3次では会社に呼ばれて丸1日、6人くらいの面接官を相手にいろんな質問をされました。

開志専門職大学

手応えはありましたか?

大石岳志

脳みそが死にましたね(笑)。頭がガンガンしました。

大石岳志

「そんなこと聞かれても知らん!」というようなことまで、どこまでも突っ込んで聞かれて。

開志専門職大学

印象的な質問は?

大石岳志

とにかく大変だったイメージしかありません。

大石岳志

最後の面接を受けたのが11月の終わりだったんですが、一向に連絡がないのでダメだったのかなと思っていたら、合格通知が年末に来ました。1カ月後くらいですね。

大石岳志

おおー、受かったという気持ちとホッとしたのと両方でした。その後にグーグルで面白いことができるかも、という実感が湧きました。

開志専門職大学

どんな面白いことをしようと思っていましたか?

大石岳志

前の会社のシスコで、新しいソフトウエアを作りたいと思っても、元々がハードウエアの会社だから限界があったんですね。

大石岳志

グーグルでは自分が作りたいものが何でも作れると思いました。

グーグルの凄さは経営への参加意識が持てること 全社9万5千人の従業員が社会を変えていく

開志専門職大学

さて現在、グーグルで働いている大石さんが、内側から見たグーグルのすごさとは何でしょう?

大石岳志

まず、優秀な人材が揃っていることです。それから、毎週木曜日に創立者のラリーとサーゲイ(ラリー・ペイジとサーゲイ・ブリン)が、

大石岳志

今グーグルが取り組んでいる新しいプログラムについて、その部署のトップの人や開発者を呼んで、社員に対してプレゼンテーションしてくれるんですね。

大石岳志

何が起こっているかを経営陣だけの秘密にせず、全社に教えてくれる。それはポンと途中から入社した社員に対しても、平等に情報を公開してくれるのです。

大石岳志

れによって、自分たちも経営に参加しているのだという気持ちになれてやる気が高まります。

開志専門職大学

全社の従業員って何人に対して?

大石岳志

僕が入社した8年前で2万人、今は9万5千人ですね。

開志専門職大学

その全社員に対してCEOが語りかける?

大石岳志

そうです。トップの人の熱意が伝わって来ますよね。

大石岳志

「こうやって世界を変えていくのだ」と言われると、働くすべての社員の心にも響きます。自分もここで働くことで役に立てるのだと思えます。

開志専門職大学

他にグーグルで働いていて忘れられないエピソードがあれば教えてください。

大石岳志

最初の上司の言葉が忘れられませんね。彼に「私のカスタマー(客)は君だ。あなたに問題があったらそれを解決するのが私の仕事だ」と言われたのです。

大石岳志

私たちはお客様に対してサービスを提供し、問題があればそれを解決します。そして、マネージャーはその部下の問題を解決してくれるというわけです。

大石岳志

働いている人を大切にする、なんて素晴らしい会社だろうと今でも強く印象に残っています。

開志専門職大学

やる気が出ますね。ところでグーグルに日本人社員は多いのですか?

大石岳志

マウンテンビュー市の本社には100人くらいいるはずです。

大石岳志

実は日本人クラブのようなものもあるのですが、私は一度も参加したことがありません。そういう時間がないというのが正直なところです。

英語の成績は10段階で2だった 親に背中を押されて留学したことが転機になった

開志専門職大学

ところで、大石さんはどんな子どもだったのでしょう。

大石岳志

小学校の時は母親がよく僕のことで呼び出されていました。イタズラ、と言うか、皆がちゃんと並んでも僕だけ遅れて動いたり、すごくマイペースだったんです。

大石岳志

高校生になっても、将来の目標も何もなくて。大学はどこにも受からなくて浪人したんですが、それでも翌年もダメで。

大石岳志

親が「アメリカでも行ってみたら」と背中を押してくれて、言われるままにシアトルに語学留学したんです。

大石岳志

そうしたら、いろんな国から来ている学生と知り合って、話を聞くと、皆、将来の仕事についてもすでに考えてるし、学費も自分で出している子もいて、あー、自分とは全然違うって思いましたね。

開志専門職大学

その後、どちらへ?

大石岳志

シアトルの雨が多い気候に耐えられなくなって、どこか暖かいところに移りたいと、フロリダへ飛びました。

大石岳志

そこのコミュニティーカレッジ(短大)に編入して、4年制大学にさらに編入しました。

開志専門職大学

英語は好きだったんですか?

大石岳志

それがもう最初の頃はひどかったです。高校時代、英語の成績は2でしたから。

開志専門職大学

5段階評価の?

大石岳志

いえいえ、10段階評価の2。やばかったです、本当に。

大石岳志

アメリカに留学する時も英語の先生に「やめておけ」と言われてしまいました。僕からしたら「ほっといてくれ」でしたけど(笑)。

開志専門職大学

どうやって英語を上達させたのですか?

大石岳志

シアトルに来てから、友達を作りたいと思ったのと、女の子を誘いたい、と思っていたから。

大石岳志

喋りたいな、デートしたいなと思って、最初は身振り手振りでそれを繰り返していつのまにか上達しました。

大石岳志

相手のことを知りたいと思うと、やる気が起こるんですよね。とにかく気持ちを伝えようとすることが大事です。

大石岳志

テレビのドラマもただ見るだけでなく、表現をそのまま使ってみたりしましたね。「こういう状況の時こう言えばいいのか」とずいぶん、参考にさせてもらいました。

渡米後、英語の先生に「君はユニークだね」と 言われたことで「この国に自分の居場所があるかも」と思えた

開志専門職大学

海外で実感する日本人の強みとは?

大石岳志

ていねいなことですね。僕のようないい加減な人間でも、ていねいな仕事をすると思われています(笑)。職人気質が強いのかもしれないですね。

大石岳志

しかし、ダメなところもあって、それは発言しないということです。日本人は遠慮しがち。

大石岳志

僕は会社ではなんでも言うようにしています。でも、妻が日本人なので家ではズケズケ言えないんですけどね(笑)。

開志専門職大学

大石さんが、大学生の間にしておいた方がいいことをアドバイスするとしたら?

大石岳志

色々な人、自分とは違うタイプの人ともコミュニケーションをとることをお勧めします。自分とは違う人の話を聞くことで、それが何かのきっかけになります。

大石岳志

僕の場合、日本ではいつもずれていると思われていたから、学校の先生には一度も好かれたことがありませんでした。

大石岳志

しかし、シアトルに来て、英語の先生に、「君は非常にユニークだね」と言われたんです。

大石岳志

それはもしかしたら「変わっているね」と言う意味の皮肉だったかもしれないけど、僕はそれを「個性的だ」という良い意味に受け止めました。

大石岳志

そして、この国だったら自分の居場所があるかもしれないと思えたのです。

開志専門職大学

何気ない他人の言葉が転機になるかもしれない、ということですね。同じ場所に留まっていては新しい人にも出会えないですしね。

開志専門職大学

さて、開志専門職大学では大石さんからどのようなお話を伺えますか?

大石岳志

何も考えてなかった僕のような人間でも、今はグーグルでがんばって働いているということを伝えて、もっと自由にいろんなことに挑戦してほしいというメッセージを送りたいです。

大石岳志

20年前の僕が今の僕を見たら、驚くはずです。

開志専門職大学

ありがとうございます。では本番の特別講義でも宜しくお願いします。

特別講師 大石岳志氏

大阪府生まれ。1999年、ユニバーシティ・オブ・セントラルフロリダを卒業後にシステムエンジニアとしてシスコシステムズ・ジャパンに入社。東京で勤務した後、希望を出して米国のシスコシステムズに移籍。2011年にグーグルに移り、ネットワークエンジニアとして勤務した後にテクニカルプログラムマネージャーに。カリフォルニア州シリコンバレー在住。趣味はサッカー。

インタビュー:福田恵子
撮影・動画:鈴木香織

タップして進む タップして進む

関連ニュース

アマゾンジャパン合同会社 吉田光希氏

アマゾンジャパンとは

地球上で最も豊富な品揃えのオンラインショッピング会社。

学生へのメッセージ

世界を代表するICT企業アマゾンになぜ採用されたのか、バンダイでの海外勤務の経験で何を得たか、また今後ICTの分野に求められる技術や人材要件を伝えたい。

全日本空輸 久野嘉一氏

全日本空輸とは

国際線、国内線ともに最大規模の航空会社。スカイトラックスの航空会社格付けで5つ星獲得。「世界で最も安全な航空会社」にも選出。

学生へのメッセージ

技術者が技術のことだけをわかっていたらいい時代ではなくなろうとしている。技術者、調整役、管理職として、ボーイングと全日空という世界的な企業をつなぐ経験から技術者を目指す学生へメッセージを伝えたい。

ロサンゼルス・ドジャース 佐藤弥生氏

ロサンゼルス・ドジャースとは

19世紀から存在するメジャーリーグの古豪球団。1990年代には野茂英雄投手が活躍し、日本人選手のパイオニアとなった。

学生へのメッセージ

企業の価値を、世界の多様な人種の人たちにどう伝えるか、マーケティンの面白さを伝えたい。

富士通フロンテック 増田義彦氏

富士通フロンテックとは

携帯電話、パソコン、ソフトウェア、ネットワーク機器など情報システム全般を扱う電機メーカー。国内パソコン市場シェア2位。

学生へのメッセージ

オーストラリア、カナダ、アメリカなど豊富な国際経験をもとに、世界で働く事の醍醐味を伝えたい。そして情報システム全般を扱う電機メーカーの経営者として、今後社会がどのように変化し、その中で求められる人材の要件や、学生時代に何をすべきかを伝えたい。

東宝 町田瑠衣氏

東宝とは

映画配給会社。世界でも黒澤明作品や「ゴジラ」がヒット、スタジオジブリの映画や劇場版ポケットモンスターの配給も手がける。

学生へのメッセージ

日本が世界に誇るソフトを、世界にどう売り込み、どうお金に換えるか、その挑戦を伝えたい。

ソニー・ピクチャーズ・イメージワークス 島田竜幸氏

ソニー・ピクチャーズ・イメージワークスとは

映画の視覚技術としてVFXを提供するソニー傘下の製作会社。「ハリー・ポッター」や「マトリックス」のVFXも担当した。

学生へのメッセージ

何事にも準備は必要だが、慎重になりすぎなくてもいい。大切なことは目指すものや目標が明確であること、夢を諦めないこと、そのための行動を起こすことであることを伝えたい。

三井エージェンシー・インターナショナル 三井悠加氏

三井エージェンシー・インターナショナルとは

斬新なアイディアで日本伝統の浮世絵を題材に現代アーティストを起用するというプロジェクトを行う。作品は大英博物館にも所蔵されている。

学生へのメッセージ

アメリカで会社を設立した経験から培った起業家精神と自由な発想の大切さを伝えたい。

三菱総合研究プラチナ社会センター 松田智生氏

三菱総合研究プラチナ社会センターとは

政策、科学技術、経済・金融、ITの分野を専門に研究し、社会改革や企業改革に活かす日本の代表的な総合シンクタンク。

学生へのメッセージ

日本が迎える超高齢化社会は、世界の先進国にとっても同じ課題。世界はどんな社会になって、どんなニーズが生まれるか、未来を考えるヒントを伝えたい。

LINE 上土達哉氏

LINEとは

「LINE」を機軸として、各種サービス、Fintech事業、AI事業を展開。

学生へのメッセージ

LINEでHR事業をリードし、新サービスの立ち上げも担当。その経験を踏まえ、やがて社会に出ていく学生の皆さんへ、社会や自分を知ることの大切さ、様々なことに積極的にチャレンジすることの重要性を伝えたい。