特別講師一覧

投資の世界では「社会問題の解決」と「投資リターン」の両立の重要性が増している。 堀大輔氏

個人や年金基金、企業などからお金を預かり、顧客に代わって資産運用を行う仕事をするアナリストの堀大輔さん。利益を得ることだけではなく、社会問題の解決、社会貢献につながる株式投資を心がけていると言います。そんな堀さんは自分の体験を通して、学生時代に海外に出ることを強く勧めています。若くして異文化に触れることの意義とグローバルな仕事の醍醐味についてお話を伺いました。
世界中の企業と会い、さまざまなビジネスを知ることができるのが株式投資家としての仕事の醍醐味。 

開志専門職大学

堀さんのお仕事について教えてください。

堀大輔

私は本業と副業を持ち、本業ではニッセイアセットマネジメント株式会社でグローバル株式の投資家として社会問題の解決と投資リターンの両立を図ることができる企業を中心に投資を行っています。

開志専門職大学

株式の投資家としての本業以外の仕事は何ですか?

堀大輔

副業の方ではビジネス・ブレークスルー大学大学院にてMBAの特定講師として、社会問題解決ができる人材育成の手助けをしています。本業副業共に、「社会問題の解決」がキーワードです。

開志専門職大学

株式のお仕事について具体的に教えてください。

堀大輔

お客様のお金を預かって、投資信託などを通じて企業の株式などに投資して、お客様の代わりに資産運用を行っています。

開志専門職大学

お仕事で心がけていることは何ですか?

堀大輔

従来はお客様からお預かりしたお金を、投資を通じて適切な収益を確保するという視点が重要でした。つまり、収益が期待できる企業に投資することです。しかし、現在は、社会問題の解決に貢献する視点の重要性も増しています。社会貢献度が高く収益が期待できる企業に投資します。つまり、収益が期待できるだけでもダメ。社会貢献だけもダメ。双方が期待できる投資を心がけています。

開志専門職大学

仕事の醍醐味は何ですか?

堀大輔

私は投資の中でもグローバル株に投資をしているので、企業分析のために世界中の企業とのミーティング等を通じて、さまざまなビジネスを知ることができます。それが仕事の醍醐味の一つです。

開志専門職大学

世界中の企業が相手なのですね。

堀大輔

私の仕事は、企業のみならず世界政治・経済の状況なども把握しておかなければなりません。例えば、ロシアがウクライナに侵攻すれば、それによって世界の政治や経済がどのような影響を受けるのかを考えなければならないのです。

開志専門職大学

世界中の出来事にアンテナを張り巡らせているのですね。

堀大輔

一つのイベントがどのようにグローバルな経済や我々の生活に影響を与えるのかを理解しておく必要があります。

開志専門職大学

株式投資のリスクにはどう対応されていますか。

堀大輔

株式投資は、当初購入した金額よりも価格が下がり、元本割れするリスクもあるので、お客様にこの金融商品に投資することによってどのようなリスクがあるのか、その代わりにこういったリターンが期待できるというような、リスクとリターンの特性をきちんと説明します。お客さまへの説明責任を果たすということは重要ですが、難しいことでもあります。しかし言い換えれば、それも一つの仕事の醍醐味だと思います。

自分が見えている世界以外のものに触れたい思考が強かった高校時代。

開志専門職大学

どんな子ども時代を過ごしましたか?

堀大輔

北海道の旭川で生まれ、15歳で函館の高校に進学し、寮生活を送りました。学級委員長のように、クラスをまとめたりするのが好きでした。中学ではバスケット、高校ではラグビーなどスポーツの団体競技をずっとやっていました。

開志専門職大学

10代の堀さんに影響を与えたことは何ですか?

堀大輔

10代での大きな経験は、高校が全寮制だったことです。1年生の時は100人部屋みたいな体育館のようなところにベッドがあって、そこでみんなで寝ていました。

開志専門職大学

100人が同じ場所で寝るのですか?すごい集団生活ですね。

堀大輔

あと30〜40人が使える勉強自習室のような部屋もありました。高1で集団生活を学んで、2年や3年になると4人部屋になります。個室はありません。その4人部屋で常に自分たちの生活のルールを作っていくというような環境にずっといました。

開志専門職大学

寮での共同生活の中でチームワークなどが学べたのですね。

堀大輔

今考えるとこの経験が、私の人生に与えた影響は大きかった気がします。

開志専門職大学

独立心、自立心が強かったのですね。

堀大輔

当時の私は、自分が見えている世界以外のものに触れたいという思考が強かったのかもしれません。

開志専門職大学

当時の夢を覚えていますか?

堀大輔

あんまり夢はなかったですね(笑)。地方にいると「ああなりたい」といったロールモデルが見えにくいのです。東京にいるといろんな人に会えますが、地方ではそんなに会えない。だから単に部活に熱中していただけでした。「大人になったら何になる」というような目標は無かったです。

真剣に取り組み、チャレンジ精神とチームワークを学んだアメリカン・フットボール。

開志専門職大学

では大学時代に一生懸命だったことは何ですか?

堀大輔

アメフト(アメリカンフットボール)です。日本ではそんなに人気のスポーツではなかったので、大学から始めてもキャッチアップできました。関東の一部リーグで常に上位争いをしている大学だったので、学生主導でチームがどうやったら勝てるのかを日々試行錯誤しながら考え続けていました。

開志専門職大学

アメフト一色の大学時代のようですね。

堀大輔

人生を振り返って、この時期は私にとって一つの原点になっていると思います。特に4年生になると約100人の部員の組織運営も担わないといけないので、精神的にもプレッシャーがかかる日々の連続でした。関東一部リーグの強豪大学に勝つために、自分たちの強みとか相手の弱点をどう突くのかを考え、それをチームと共有して練習に落とし込む日々でした。

開志専門職大学

この経験から何を得ましたか?

堀大輔

チャレンジ精神やチームワークを学びました。そして、大学の4年間で同じ釜の飯を食べた仲間は一生の宝になり、卒業後もつながっています。大学時代に一緒に何かに夢中になって追いかけたということが、一つの大きな財産になりました。

開志専門職大学

ところで今、仕事で海外とやり取りされている堀さんですが、学生時代の英語力はどうでしたか?

堀大輔

英語には全く興味がありませんでした。大学の卒業旅行で初めて海外(イタリア)に行って、その時に全く言葉が喋れなくてカルチャーショックを受けました。大学の頃にもっと海外に行っておけばよかったと思っています。

開志専門職大学

若い頃に海外を知るのは大事と?

堀大輔

早ければ早いほどいいと思います。中学生の頃、交換留学生としてミシガン州に行った生徒がいたのですが、私は部活で行けませんでした。中学校の頃に海外にもっと触れていたら、大学に入ってから全然違ったのだろうなと後悔しました。

ルールありきではなく、「ルールは後から作るものだ」という発想が強い欧米企業。

開志専門職大学

社会人になって、学んだことは何ですか?

堀大輔

30〜35歳ぐらいの頃にロンドンとシカゴでの海外勤務を経験しました。そこで学んだことは欧州・米国企業の考え方です。日本との大きな違いは、日本はルールを守ることを重視して、ルールがあるからできないと諦めてしまうことが多い。でも、アメリカやイギリスの企業はルールが先ずあるのではなく、ルールは後から作るという発想が強い。つまり、グレーゾーンでビジネスを作り始めることが多いのです。

開志専門職大学

グレーゾーンとは何ですか?

堀大輔

グレーゾーンとは、物事の中間やあいまいな領域のことで、グレーゾーンのビジネスの原点にあるのは、ルールが無いけどこれをやることによってお客様にとってメリットがあるものを追求することです。

開志専門職大学

具体的な例はありますか?

堀大輔

例えばFacebookです。世界中で多くの人が使っていますが、あれはコミュニティーがすごく充実していて、遠く離れていても中学校とか大学の同級生といつでもつながることができます。

開志専門職大学

確かに人とつながるのに便利です。

堀大輔

でも、今問題になっているのがプライバシーです。プライバシーがどこまで保護されるのかはFacebookにとって大きな問題です。でも、最初にプライバシーを意識して、プライバシーを侵害するような問題があるかもしれないということを意識すると、Facebookのようなビジネスはできなかったでしょう。

開志専門職大学

確かにそうですね。

堀大輔

リスクはあるけれども、消費者やお客様にとって利便性があるのなら、グレーゾーンでそんなコミュニティーを作る。そしてFacebookのようなビジネスが生まれたのです。

開志専門職大学

先にリスクばかり考えていたらFacebookは誕生しなかった。

堀大輔

問題が出たら、プライバシーの部分とかは後から修正し、規制をかける。そんな発想がアメリカやイギリスの企業では強いですね。ルールありきではなく、「ルールは後から作るものだ」という発想が強いということを学びました。

開志専門職大学

他に日本と違うことは何ですか?

堀大輔

コミュニケーションの方法です。日本は空気を読むとか、阿吽(あうん)の呼吸を重視しますが、それができるのは日本には外国人が少ないから。例えばアメリカやイギリスには、多様な国の人々が世界中から来ているので、そもそも各人の常識が異なります。その中で、「向こうが分かってくれるだろう」と思うのは間違いです。

開志専門職大学

生まれた環境や文化が違えば、常識も違うでしょうね。

堀大輔

だから、はっきりと自分の意見を論理的に伝えることができないと、何も喋らなくて何を考えているのか分からない人と思われてしまいます。ダイレクト・コミュニケーションという、よりはっきりとした自己主張をしないと海外では通用しないことを知っておいてほしいと思います。

できないのではなくて、どうやったらできるのか。「やってやるぞ」というチャレンジスピリッツが重要。

開志専門職大学

学生の皆さんに伝えたいことは?

堀大輔

「社会問題解決に貢献できる大人を目指そう」ということです。寄付とかボランティア活動だけではなく、自分自身ができることを考えて実践してください。そのためには世界を知ることが重要です。

開志専門職大学

世界を知るには何が必要ですか?

堀大輔

英語が重要です。他には、問題発見・解決力を身に付けること。社会により大きなインパクトを与えるためには、論理的な問題発見・解決力が必要です。一朝一夕に身に付かないので、意識をして日々過ごせば、ステップバイステップで問題発見・解決力が身に付くと思います。そして、できない理由を並べずにできることを実践する。できないのではなくてどうやったらできるのか、「やってやるぞ」というチャレンジスピリッツが重要です。

開志専門職大学

大学時代をどう過ごしてほしいですか?

堀大輔

大学時代は自立への第一歩。自由に使える時間が今まで以上にたくさんあるはず。その時間をどう使うのかが重要です。勉強だけではなく、見たことのないものに触れてください。

開志専門職大学

具体的に言うと?

堀大輔

異文化に興味を持つことです。異文化に興味を持たずに慣れ親しんだものだけに時間を使うのはとても心地良いと思いますが、そのコンフォートゾーンから抜け出してください。そうすれば、世界を知る第一歩につながるでしょう。今まで興味の無かったことや「これなんだろう」って思っていたことに興味を持つのが大事です。

開志専門職大学

他にもありますか?

堀大輔

夢中になるものを見つけてください。夢中になって何かに没頭しても、全てがうまくいくことはないかもしれません。それでも諦めるのではなく、夢中になった最初の原点を見直して、本気になって取り組むためにどのようなことができるのかを考え努力をする。結果的にその経験は素晴らしい財産になるはずです。

開志専門職大学

諦めないで、本気で取り組むのですね?

堀大輔

社会人になると日々課題が多くて辛いこともかなり多い。その時に、学生時代にあそこまで頑張れた、本当に自分がやりたいと思ったことに対して本気で取り組んでできたというような経験を持っていることは、大学を卒業して社会に出て課題や困難な問題に直面した時に必ず力になると思います。そういった意味で夢中になるものを見つけ、本気で取り組んでほしいですね。

開志専門職大学

最後に、開志専門職大学での特別講義ではどのようなことをお話いただけますか?

堀大輔

講義では、「社会問題解決に貢献できる大人を目指そう」ということについて話したいと思います。そのために重要な「世界を知る」、「問題発見・解決力を身に付ける」、「できない理由を並べずできることを実践する」ということを詳しく紹介したいと思います。

開志専門職大学

それでは、特別講義を楽しみにしています。よろしくお願いします。

特別講師 堀大輔氏
ニッセイ アセット マネジメント株式会社
株式投資アナリスト

1976年生まれ。北海道旭川市出身。函館の高校を卒業後に東京大学法学部に入学。大学卒業後は日本生命に入社し、グループの資産運用会社ニッセイアセットマネジメントで株式投資のアナリストの業務に当たる。2006~10年にかけてイギリスのロンドンとアメリカのシカゴに海外赴任。

タップして進む タップして進む